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本能に没頭

落ちこぼれがいつまでも落ちこぼれのままだって、誰が決めたんだよ? 教えてやるよ―“最強”への方程式(メソッド)ってやつをな。 俺はあいつらの教官を引け受けた。そして、あいつらを一人前の空戦魔導士に育てるって自分に誓ったんだ。 俺が嫌われることであいつらが強くなれるなら、そんなの全然大したことじゃねえよ。 強くなれ。そして、俺たちと同じ空に来い。 TVアニメ、空戦魔導士候補生の教官、7月より、放送開始。

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

 「新米小僧の見習日記」さんの「話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選」企画に勝手に参加する。ルールは以下の通り。

●2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定
●1作品につき上限1話
●順位は付けない

 
 
・『ディバインゲート』12話(最終話)「扉のその先へ」
 原作ソシャゲ未プレイの状態で視聴。物語の内容、雰囲気は真摯であったが、完走するには大変に労力のいるアニメだった。置いてけぼり感が強く、不明瞭で唐突なストーリーの展開、無駄に多いキャラクターの面々、釘宮少年Kとの対話、そして降り注ぐ緒方ポエムナレーション……視聴者を鬱屈とさせる要素をいくつも抱えていた。気に入ったのはED曲ぐらいで、正直同クールの霊剣山での修行よりもキツかったことを覚えている。
 しかしながら、費やした時間に後悔を感じつつ迎えた最終話の最終盤、EDに入る直前の別れのシーンに、突如として祝福の瞬間は舞い降りてきた。
  
 『ナレーション「ポツリポツリと降り出した雨は、路上の窪みを埋めはしても、心に空いた穴を埋めはしない。だが、少年たちは信じる。一度繋がった心は離れないと。降る雨は、やがて止むと。」』 

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 この間ものの20秒。寂寥感漂うギターの音色を背景に、甘美に潔く響くこのポエムは、私の心を拐っていった。季節は初春、梅花薫る片田舎の一室に、どうしようもなく涙する私がいた。まさにディバインゲートのその先に辿り着いた瞬間であった。第1話のサブタイトル「止まない雨」はこの瞬間に掛かっていたのだ。
 独特なポエムナレーションとED曲は、計12話全体を通してジャブのように効いていて、ラストシーンでの、その2つの巧みな共演による「大どんでん返し」が印象に残っていたためにこの話を選んだ
 余談になるが、『空戦魔導士候補生の教官』のラシトシーンは、これとは対照的に、無言で泣かされたことを覚えている。

 

 
・『聖戦ケルベロス 竜刻のファタリテ』第1話「ロード・オブ・ダークドラゴン」
 声に出して読みたい秀逸なサブタイトル群を抱える、2016春クールの寵児。ストーリーは筋が通っていて、キャラクターも魅力があり、独特の雰囲気にも関わらずクセは弱いため、万人におすすめできる。
 先ほどは「空戦」の名前を出したがこちらは「聖戦」。「空戦」との類似点は主人公が用いるパワーワードにある。カナタ・エイジ師が用いるパワーワードを「静」と形容するならば、ヒイロくんのそれは「動」と感じられる。第1話でお気に入りの台詞を以下に列挙する。
 
 ・「剣士たる者……必要でない時以外、剣を抜いてはならぬ」…トミッテくんの窮地を救うときに発した第一のパワーワード。気高く冷静に振る舞うその姿からは、後にあらわになる彼の真の姿を想像することはできない。
 ・「トミッテ……これは俺のダルハルバートだ」…トミッテくんに唐突に放たれた第二のパワーワード。私の視聴を決定づけた核心的台詞。集中線とともに伝わる気迫には笑いを通り越して感動すら覚えた。

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 ・「フッ」「ンフッ…フフフッ」「ハァ…ンハハ」…トミッテくんたちとのアクロバチック追いかけっこの際に自然と漏れたアドリブ台詞。ヒイロくんの豊かな喜びを静かに伝えてくれる。
 ・「久しぶりに肌がひりつくぜ」…説明の要らないかっこよさ。
 ・「俺を怒らせるな。さもないと、この剣を抜くことになる」…同上。
 ・「間違いなく切ったんだけどな?」…カナタ・エイジ「ん、言わなかったか?それ果物ナイフなんだぜ」
 ・「俺の剣が静かに震える」…次回予告で放たれた衝撃の一言。

 

 ケルベロス第1話はとにかくヒイロくんの一挙手一投足に注目するだけで楽しめる。スライムに負ける第3話など、魅力の詰まった回は他にも沢山あるが、初回のヒイロくんの台詞回しの鮮烈さが特に印象的だったから、第1話を選んだ。
 

 
 第1話パワーワードアニメとしては『ドリフェス』も似たような感覚を味わえる。
 
 
・『あんハピ』第4話「4月29日 ナゾナゾな罰ゲーム」
 今年のベストアニメからこの話を。
 繊細で幻想的な淡いカラーの花々が咲き乱れ、それを背景にはなこ達5人が並ぶとき、私はあんハピに桃源郷を知覚したのを覚えている。

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 他には「私はすっごくツイてるよ」の第1話、ヒビレン回の第5話、夏休みチモシー回の第10話など、あんハピはすべてのエピソードで私に幸せを与えてくれた。
 

 
 「あんハピを覚えている者は幸福である 心豊かであろうから」
 (とあるスレッドのタイトルより)
 
 
・『ばくおん!!』第12話(最終話)「もしものせかい!!」
 女子高生×バイクというだけにゲテモノアニメか思いきや内容は真面目なコメディで、バイクあるあるやツーリングの丁寧な描写、溢れるSUZUKI愛、木戸千雨さんの参戦、そしてこの第12話と、硬軟織り交ぜた巧みな演出により、見どころは非常に多かった。
 第12話Bパートにおいて、いつぞやのツーリング時に遭遇したバイクの神様に偶然にも再会した主人公は、「ところで佐倉羽音。君はもしこの世界からバイクがなくなったらどうする?」と質問を投げかけられる。次の瞬間から、それまではコメディ要素の強かった作風が一変し、「オートバイのないセカイ」が表れる。
 周囲は自転車に傾倒し、HONDAの歴史は捻じ曲げられ、仄かに狂った雰囲気のなか、取り残される主人公。遂には壊れ、
 
 「かたっ。サイドスタンドよし…佐倉羽音、いきます。ぶおーん…ぶおーん!しゅいーん!」

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 と口バイクを始める。そして夢から覚めたところでこのセカイは終了する。
 このどこかおかしく侘しい感覚で思い出したアニメがある。怪作『グラスリップ』である。瞬間鳥肌が立った。あのアニメのリベンジを果たすべく、最終話にしてこの雰囲気をつくり出しぶっ込んだ監督の意気込みにハッとさせれたからだ。
 「監督 西村純二」と聞いて『グラスリップ』を思い出したあなたには是非この第12話を見て頂きたい。見事なグラスリップを堪能することができる。
 
 
・『一人之下 the outcast』第2話「主人と下僕」
 熱情的なOPソングで始まる、『霊剣山』に続く中国大陸からの刺客。霊剣山と同じくコミカルな作風でありながらも根は真面目で、こちらは孤独、離別、自由といった現代的なテーマが取り上げられている。OP曲の歌詞に詠まれているのでそちらも参照して欲しい。
 主人公の張楚嵐(チョウソラン)が覚醒する第6話、ヒロインの馮宝宝(フウホウホウ)の悲しい過去が明らかになる第11話、そして物語の全貌が判明する第12話(最終話)など、主題が一貫していて他にも見どころの多い作品であった。
 第2話では、ソランと宝宝の戦闘が繰り広げられる。宝宝の圧倒的な戦闘力に為す術のないソラン。彼女が襲いかかるとき、ソランは自らの「異人」としての過去を振り返る。キーになるのはソランの祖父、張錫林(チョウシャクリン)との回想シーンだ。
 その特異な能力が原因で世間から隠遁した生活を送る張一家。そんな境遇に不満を漏らすソラン少年にシャクリン翁は優しく諭す。能力をひた隠にするのは周りから身を守るためだと。
 
 ソラン少年「でも、爺ちゃん……なんでクンフーを教えてくれたの?一体いつ使えるのさ?」
 祖父シャクリン「ははははは、それはもちろん……命に関わるときじゃ、ソラン」
 
 静かに盛り上がるBGMと共にソラン(現在)も目を覚ます。
 
 ソラン「この力、爺ちゃんは絶対に使っちゃダメだと言ってたけど、もう使うしかなさそうだな」
 
 場面は再び回想へ。
 
 祖父シャクリン「そうそう、その調子じゃ。体内のキンコウを発動させ、まじないを以て駆使するんじゃ。……天地現生」
 ソラン少年&ソラン(現在)「天地現生…万機今現……才難を汎く収め、我が神通を開かす!」
 
 能力を開放したソランは宝宝と戦い始める。
 
 祖父シャクリン「この世には、儂ら以外にも異人はおる。もしお前が意図せず、異人に出会ってしまったなら、それが誰であろうと、どのような状況であっても、迷うことなく、キンコウを以て戦うのじゃ……。さもなくば、命を落とすことになろう。」
 
 活きのいい作画を背景に熱戦を繰り広げる両者。
 
 祖父シャクリン「体内のキンコウを収めるば、我が身を防御す。放てば、敵を攻撃できる。」
 ソラン「爺ちゃん……やっと分かったよ。小さいときから厳しく俺にクンフーを教えてくれたのは、こいつみたいな異人から自分を守るため……。そういうことだろ、爺ちゃん!」

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 祖父の想いは時間を超えて伝わり、それを受け取る孫もまた祖父へと想いを馳せる。ソランがシャクリンの言葉を理解したとき、それは同時に、彼の命を守る強力な力となった。
 霊剣山で鍛えられた私はソランに倣い、自らのキンコウ発動させ全身全霊でこの場面に震え上がっていた。
 祖父と孫、過去と現在、師匠と弟子、男と男のシンプルな関係を生かした、見事な渋いシーンだった。
 
 
・『レガリア The Three Sacred Stars』第12話「奪還 / REGAIN」
 アクタス制作の夏クール(秋クール?)の問題児から選出。異例の放送延期をものともしない堂々たる1.5クール虚無アニメである。終始説明が不足気味で、淡々と進むその物語は例えるなら「出汁の入っていない味噌汁」状態で、とにかく「薄い」のが印象的だった。
 

 
 しかし、それまで抑えめだったヨハンが第10話からラスボスとして君臨することで、私のレガリアに対する評価は一変した。それまでの沈黙の堰を破るように、ヨハンはその力を誇示し始めた。私はその余裕のある荘厳な態度に、今までの退屈な演劇を打破してくれる彼の姿に、ある種の爽快感を覚えたのだ。
 
 ヨハン「何やっているの君たち?王の御膳だ。膝まづいてひれ伏しなよ」
 
 第12話Bパート、アレクトが覚醒し、ユイ、レナとの名言バトルは加熱する。
 
 ユイ「でも、あなたは、また同じことをするんでしょう?」
 ヨハン「そうだよ、君たちを消した後にゆっくりやり直すことにするよ」
 ユイ「だから」
 ヨハン「だからなにさぁ(怒)」
 
 ユイ姫の予想外(予定調和)の精神攻撃により次第に追い詰められるヨハンくん。複雑に怒りの表情を変え、緒方さんの熱演に支えられた彼は、王から『レガリア』の神(小者)へとその姿を変え始める。
 
 ヨハン「こいつなんなのぉ。人間のくせに、なんでさっさとひれ伏さないんだよ!」
 ヨハン「わかんないのぉ、ぼくときみとじゃ、王としての力が違いすぎるんだって!」
 
 壮大なメインテーマBGMが彼の勇姿を一層盛り上げる。 
 
 レナ「(前略)それが人間、そしてユイの力!あなたや私の力なんかとは比べ物にならない、本当の力よ!」
 ヨハン「へうぁああああああー(発狂)。消えろ!」
 
 ヨハン「一人じゃなにもできないってことを、なに偉そうに語ってんだよ!」
 ヨハン「結局他人の力がないと何もできないんだろう?僕は違う、僕ならそんなことなくても何でもできる。僕の力こそ、本当の力なんだ。だからお前らみたいな奴らは、大人しく僕のオモチャになってれば良いんだよ」
 
 早口で捲し立てるヨハン。もう私の胸は、彼から伝わってくる衝動で一杯だった。
 
 ユイ「ヨハンくんは人間が羨ましいの?」
 ヨハン「はぁ?」
 
 ユイの発言がヨハンの核心を突く。
 
 ヨハン「黙れよ……だまれっていってるだぁろ!」
 
 激昂したヨハンは最終兵器「お◯んぽ咆」を繰り出すも、アレクトの覇気のない「アストラルブロー」に惜しくも敗れる。
 
 ヨハン「女王様、君には本当に腹が立つよ。僕に仲間はいない、大切な人もいない。(中略)君みたいに全て持っている人間に言われるのだけは我慢できないなあ。だからもういい、もう何も要らない、人間なんてどうでもいい……。ユインシエル・アステリア……お前は殺す。」
 
 彼の悲壮な覚悟は、それまでの全てをかなぐり捨て、ユイへの怨念へと昇華する。
 ヨハンくんは本当に人間味溢れるキャラクターで、そのエンターティナーっぷりに脱帽した。彼と出会うために、私にとっての『レガリア』は存在したのだ。
 

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 第10話から最終話までの一連の流れのピークとしてこの第12話を選出した。
 
 レナ&ユイ「みんなで笑ったり泣いたりしながら、私たちは生きて生きて生き抜くんです」
 ヨハン「だったらそれを、ここで断ち切ってやるよぉ!」

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 ヨハンくん……ありがとう。
 
 
・『ViVid Strike!』第10話「雨」
 真剣な試合には、美少女が殴り合いをしている滑稽さだの、突飛な世界観に対するシュールさだのといった印象は完全に除外されていて、鬼気迫るものを感じた。

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 リンネとフーカが殴り合い、彼女が彼女へと心の底からの想いをぶつける瞬間、そこからは二次元を超えた、人と人との生の感情が生起される。セリフ一言一言がまさに「強烈な一撃」として五臓六腑に突き刺さる、2016年最強の1話。
 

 

 

・『響け! ユーフォニアム2』第10話「ほうかごオブリガート
 久美子があすか先輩に想いを告げるシーンが良かった。似たシーンがある第13話(最終話)も必見である。 

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・『Re:ゼロから始める異世界生活』第18話「ゼロから」
 2016年で最も面白かった作品のひとつ。第1クールを下地にした第2クールの白鯨戦までの展開の上手さには脱帽させられた。核になるのは主人公ナツキスバルとレム。特にスバルくんは心理描写が秀逸で、表情、台詞、回想、行動、どれをとっても魅力的なキャラクターだった。
 物語が動き出す第14話や、怪演ペテルギウス松岡の初登場とともにラストで衝撃を与えた第15話、また物語のピークを考えればやはりワルブレ白鯨戦ではあるが、実質的にこの第18話がナツキスバルの転換点、まさしく「ゼロから」と言うべき、異質にして象徴的な回で圧倒的な熱量を誇っていた。
 それまで道化とも言うべき振る舞いで自分の存在を必死にアピールしてきたスバルは、避けられない悲惨な結末を経て自暴自棄に至る。それまでの話で、呆れるほどに空回りさせ、周囲が幾度となく彼を虐げる描写があったのも、彼から自尊心を奪いどん底へ追いやるための効果的な背景となった。「怠惰な狂人もどき」を描いていたのである。
 第18話は、それを背景に、絶望の淵から逃避行を図ろうとするナツキスバルを、疲労困憊で自尊心を無くしてしまった彼を、レムの重厚で繊細な想いが救い出す。そしてナツキスバルが「漢」になる話である。
 2人で、2人だけの世界で、お互いの感情をぶつけ合い、そして意思を通わせる瞬間、私の「脳が震え」た。 

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 リゼロ第18話は、ビビスト第10話、ユーフォ2第10話に続く「タイマン告白」回である。(私の視聴順はビビスト→ユーフォ→リゼロ)
 
 
・『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』第11話「残虐戯具」
 信頼していた兄の裏切り、仲間たちとの軋轢、そして父のように慕っていた明智との確執。第10話において怪盗二十面相に捕らえられ、問答される花崎少年の心には様々な感情が反芻する。
 第11話冒頭、真っ暗な空間から聞こえるのは、怪盗二十面相の美声と悪魔の甘い囁きであった。
 
 「来るかい?」(パリーン)

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 瞬間、輸送機のハッチガラスが割れ、OP曲を背景に花崎少年は大空へと追って身を投げ出す。過去のしがらみから逃れ、己と決別するために。
 

 

 

◯話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選一覧

・『ディバインゲート』12話(最終話)「扉のその先へ」

・『聖戦ケルベロス 竜刻のファタリテ』第1話「ロード・オブ・ダークドラゴン」

・『あんハピ』第4話「4月29日 ナゾナゾな罰ゲーム」

・『ばくおん!!』第12話(最終話)「もしものせかい!!」

・『一人之下 the outcast』第2話「主人と下僕」

・『レガリア The Three Sacred Stars』第12話「奪還 / REGAIN」

・『ViVid Strike!』第10話「雨」

・『響け! ユーフォニアム2』第10話「ほうかごオブリガート

・『Re:ゼロから始める異世界生活』第18話「ゼロから」

・『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』第11話「残虐戯具」